IKE・SUNPARKの近隣地域、東池袋・大塚・雑司が谷で長年愛されている場所と、新しい文化を生み出している場所、そこに携わる人たちの思いをご紹介しています。
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1973年創業。先代を継ぎ、御舩泰司さんがここ東池袋に根を下ろしてから30年が経つ。今は住宅街となった店の周辺は、かつて人が溢れかえる商店街だったが、バブル崩壊とともにその姿は消え、いつしかマンションが建ち並ぶように。そこへ若い家族世帯が多く移り住み、彼らと古くから住まい続けるお年寄りがミフネ洋菓子店の常連客となった。
ミフネ洋菓子店は“洋菓子店”でありながら、今では人々の生活になくてはならない“まちのパン屋”の役割も担う。食パンを始めとする日々のテーブルに欠かせない類のパンから、素朴で懐かしい味わいの惣菜パン、かわいらしいキャラクターをかたどったパンなど、老若男女が喜ぶラインナップを毎日焼く。エアライズタワー前にも支店を構え、御舩さんの奥さんが手がけているサンドイッチなども人気だ。パンは本店ですべて仕込んでいる。
平日15時過ぎに伺うと、御舩さんたちがちょうど“ホテルブレッド”を大量に焼き上げ、せっせと店頭に並べていた。パン屋というと、早い時間に焼き上げたものを夕方にかけて販売し、売り切れ次第営業終了する印象があるが、3月下旬の取材当日は最近の社会的状況から、これからパンを求めにやってくるお客さんがたくさんいるとのことだった。
世の中が急に揺らいだ時に食は心配の種にもなりうるが、人々を元気付けるのも食だ。買い占め現象が起き、スーパーの棚が空になっても「材料が手に入る限り焼き続けるから、地域の人々には安心してほしい」と御舩さん。パン屋として周辺住民たちに寄り添いながら、人々の同様を少しずつ取り除いているようだった。地元に根を張る個人店の、長年かけて築き上げてきた強さを思い知らされる。
7自身も子どもを育てながら、まちの家族を見つめ続けてきた御舩さん。新しく公園ができるならば「広く、ひらけているのが一番」と話す。「すぐ近くには学校があり、子どもたちが多いところ。地域で彼らを守ってやらなくてはならないが、死角が多いところだとそれだけ危険も大きい。広い原っぱで影がなく、大人みんなで見てやれるような場所になったら安心です」。
取材のあいだにも、近隣の常連客が次々とパンを買っていく。彼らの他愛もないやり取りを聞くだけで、御舩さんがそれぞれの日々を支えているのがよくわかる。御舩さんは、時代を超えたパン屋としての営みを通じて、人と人とのつながりこそが大きな“防災”なのだと教えてくれた。
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ミフネ洋菓子店
住所:東京都豊島区東池袋5-29-1
営業時間:月〜土 7:30〜19:00
電話: 03-3971-2248