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IKE・SUNPARKの近隣地域、東池袋・大塚・雑司が谷で長年愛されている場所と、新しい文化を生み出している場所、そこに携わる人たちの思いをご紹介しています。

 

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 近隣の住民から「タキさん」との愛称で慕われる、瀧澤光雄さん。10代のうちから親方である父方に弟子入りして以来、60年以上も江戸提灯づくりを続けている。分業制の提灯づくりが主流となったなか、瀧澤提灯店は一連の作業を手がけることができる都内有数の工房のひとつだ。

現在は文字入れにポスターカラーが用いられることが多く、瀧澤さんのように墨で描く職人はもういないという。持ち手の藤を手仕事で編み込めるのも、瀧澤さんだけだ。金具を打ったら塗料を塗り直すなど、細やかなところに忘れられてしまった職人の美意識が光る。取材の日は、長い付き合いの消防職員が出世するからと、贈り物の提灯を仕上げているところだった。

 瀧澤さんは職人として数々の提灯を手がけながら、豊島区の消防団員として25年間も前線を走り続けてきた。直近の2年間は消防団長として団員たちをまとめあげ、3月下旬の取材日にあと数日で任務を終えるのだと話してくれた(その後も活動は続く)。

 全国的に人員不足が課題となっている消防団が多いなか、豊島区は例年満員。商店を営む面々から区内に住まう若者、通ってくるサラリーマン、学生が多く入団してくるのだという。話を聞いていると、まるでかつて栄えた商店街のコミュニティの役割を、消防団が代わって担っているようだった。団員同士で飲みにいったり宴会を開いたりと、日常的に交流を重ねる。瀧澤さんは、時には3年半の月日をかけて地元のお祭りの神輿をつくり上げるなど、本業や団員としての活動以外にも地域のために手を動かし続けてきた。

 「昔は駅前には雑木林があってよく遊んだものです。戦後に米軍が入ってきた時にはバリケードに侵入しようとして見つかって逃げたり……」。瀧澤さんが育ってきた頃は、時代ごとに子どもなりの遊び場ややり方が存在したそうだが、開発が進み子どもが遊ぶ場、あわせて区民が自由に使える場が減ってきたことを嘆く。

「昔は雑木林なりが人々の避難場所になっていましたが、今では日頃から自由に使える場所が全くありません」街の変化に伴い激減してしまった、住まう人々がいつでも自由に使える場所。それが公共」に求められていることであり、公園の果たすべき役割なのかもしれない。

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瀧澤提灯店

住所:東京都豊島区東池袋4-5-1

営業時間:月〜日 9:00〜18:00(不定休)

電話:03-3982-1402